数回にわたり弟とLINEで連絡を取るが、弟は相変わらず大丈夫だとしか言わない。
そもそも大型台風来ると世の中騒いでいたのに、何もしなかったことに驚いた。
インターネット情報が、もう危険です!避難してくださいって言ったら、暴風雨の中、誰があの二人を助けるのか、私の方が近いとはいえ、こっちも危険にさらされるのだ。
弟の家が安全ならあらかじめ連れていくべきだし、いざとなったら…なら自分が実家で待機するとか考えつかないものなのか。
あとで知ったことだが、母は不安で何度も弟に電話をしていたらしい。
胃も痛くなり気持ちがおかしくなりかけていたようだ。
父は最初のうちは昼寝したりしてのんびり構えていたが、近所の家が全て避難したことを知って市役所に電話をし続けたらしい。
市役所は川向うの小学校へ行くようにと繰り返し勧めて、その避難所以外で、もうひとつ案内したのは、自宅から晴れていても30分はかかる場所だった。
いくら私の気持ちが過去に悲しかったからとはいえ、命は別だ。
もしものことがあれば、今より嫌な気持ちだ。
雨や風がさらに強くなり、これ以上経過してからは外に出るとモノが飛んでくるかもしれないので危険だし、弟が大丈夫しか言わないので、夫に相談して、ひとまず私の気持ちは置いておいて、父と母を私の家に連れてくることにした。
夫が電話し、私と夫は迎えに行った。
行く途中のコンビニで、食料買い出しして。
実家に着くと、父と母は荷物をまとめて待っていた。
母はよほど怖かったのか、すごい勢いで車に乗ってきた。
自宅では夕飯を出して、リビングのテーブルを寄せてスペースを作り、ちゃんと布団も敷いてあげた。
母は恐怖の時間が長かったせいで食事が取れず、早々に布団に入った。
雨戸も閉まっていて外の音はほとんど気にならずにぐっすり眠れたらしい。
安心感とたっぷりの睡眠で、朝食は二人ともよく食べていた。
翌日は天気も回復したので、二人を実家へ送った。
とても感謝していた。
弟はその時のことは、いまだに後悔している。
そんなに恐怖だったなんて想像できなかったと。
弟はそういう人なのだ。
意地悪なわけでもなく、想像できないのだ。