母の感情の波は激しくて、いつ何でどうなるかわからないので身構えて暮らしていた。
就職して少し経つと結婚式の招待状をもらうようになっていった。
招待状が届くと、いつなのか誰なのか知りたがり、ついには自分の服なのかコレを着て行けと言って服を持ってきた。
歯磨き粉みたいな独特の白い布地にデカいエンジ色の花が前も後ろも描かれている服なんて着たくないから、断ると、やっぱりスイッチオンとなり、なんで着ていかないんだとわめき出すけど、こっちだって譲れない。
友達から借りた服を着て参加した。
帰宅すると待ち構えていて、引き出物を開けさせてとせがむ。
そういうのが好きでたまらなかったらしい。
開けさせていれば着なかった服のことなんかもう忘れているみたいだった。
服はその時だけでその後は着ろとは言わなかったけど、引き出物開けるのは毎回だった。
その時期に私にも結婚しようと言ってくれた人が現れて、全て決めてから親に話だけして、形だけ挨拶してもらって話を進めてしまった。
ちなみに結婚すると言ったら、どこの大学を出たのか?という質問が返ってきた…。
大学名を言わせて国立だと勘違いして喜んでいた。
違うとしてきたけど、とりあえず相手は公務員なのでいいと考えたらしい。
夫の親は結婚に必要なお金をたくさん出してくれた。
バブルの頃なので相当かかって申し訳なかった。
今はその時の恩返しをしている。
母は結婚式場で販売していた婚礼家具セットを勝手に契約してきた。
キャンセルできるけど私からの気持ちと言うので、少しでも何かしてもらえるならと、もらうことにした。
ところが、何かと話してると必ず買ってやったと言うので、夫の親が出してくれた金額を考えたら、夫にそんなこと言われても困ると思った。
だいたい、買ってやったという家具とずっと暮らすのかと思うと、ますます嫌な気持ちになり、以前、株につぎ込んだ私のお金を返せ、返せないならそれでこの家具買ったと思うから二度と金出したと言わないで欲しいと言った。
ちょうどその金額だった。
金を返せと言われるのがよほど嫌だったのだろう。
返さなくて良くなったのでホッとしているようだった。